

2017
第21回日本精神保健・予防学会学術集会
上田 淳哉
2017年12月9日から10日まで、沖縄県那覇市で開催された第21回日本精神保健・予防学会学術集会に岸本教授、岡田光司先生、盛本助教、岸本直子心理士、岡崎医員、私で参加しました。
会場では、岸本教授が座長を務めるワークショップ「精神疾患を疑ったら?-早期精神病診断・治療の最新ガイダンス-」でARMSの薬物治療について盛本助教が口頭演説を、岸本直子心理士が「At Risk Mental Stateにおけるロールシャッハ・テストの特徴-統合失調症との比較-第2報」、岡崎医員が「学校現場と医療現場の連携による早期支援を行った好事例の検討」のポスター発表を行いました。本学会はARMSがテーマの中心となっており、特にワークショップではARMSに関するガイダンスの方向性やそれをどのように普及させるか、また政策との関わりについてもその必要性が議論されるなど活発な討議を拝聴することができました。また、精神病圏に限らず様々な精神疾患に対する早期介入について、他施設での実情などを知りました。
私個人としては一般演題で発表された小塩靖崇氏のメンタルヘルスリテラシー教育に関する報告から、自分自身の研究テーマにどのように反映させるか熟考する良い機会となりました。
本学会を通して、今後の臨床や自分自身の研究に活かせるアイデアを豊富に勉強させていただきました。最後にこの場をお借りして、病棟業務のため残っていただいた先生方に御礼申し上げます。
Neuroscience 2017 (Society for Neuroscience)
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 井川大輔
平成29年11月11日から17日まで米国のワシントンD.C.で開催されましたNeuroscience 2017に参加しました。私はMicroglia-derived neuregulin expression in psychiatric disorders、太田先生がImpact of cormobid autism spectrum disorder on event-related potentials in attention-deficit disorder、西畑先生がSocial isolation during the critical period reduces synaptic and intrinsic excitability of subtype of pyramidal cell in mouse prefrontal cortexというタイトルでポスター発表を行いました。毎回のことながら3万人以上が参加する大規模な学会で、ポスター閲覧やシンポジウム聴講に体力がいる学会でした。意欲や意思決定、目標指向性、報酬系、記憶制御、恐怖記憶制御といったベーシックな脳機能についての講演が多く、興味深く拝聴しました。私の演題とも関係ありますが、精神機能への免疫の関与について、また腸内細菌と脳機能に関する演題も多く勉強になりました。個人的には、海馬CA2領域が社会記憶に関与していることや歯状回の介在ニューロンが空間記憶に関与していることなど、海馬について新しく知見を得られたことはとても有益でありました。
第25回日本精神障害者リハビリテーション学会
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 松田康裕
11月16日から11月18日まで久留米市にて開催された第25回日本精神障害者リハビリテーション学会に参加しました。2016年にNeuropsychological Rehabilitation誌に掲載された「Feasibility and effectiveness of a cognitive remediation programme with original computerised cognitive training and group intervention for schizophrenia: a multicenter randomised trial」が第4回野中賞に選出されたため、受賞講演および授賞式に参加させて頂きました。また昨年同様に自主企画「就労支援に役立つ認知機能リハビリテーション(VCAT-J)」にて講演もさせて頂きました。長年取り組んできた認知機能リハビリテーションに関する研究成果が権威ある学会から最優秀論文と評価されたことを大変光栄に思います。このような研究成果を得ることができたのは、これまでにご指導して下さいました先生方、そして、共に研究を行った方々のご協力のお蔭であり、感謝申し上げます。今後とも努力を重ねて、さらに研究を発展させ、患者さんの就労支援に貢献できるよう注力したいと思います。
第30会日本総合病院精神医学会総会
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 盛本 翼
平成29年11月17日から18日まで富山国際会議場で行われた、第30会日本総合病院精神医学会総会に参加し、「早期精神病の診断と治療:本邦における実践を見据えて」というシンポジウムで、FEP(first episode psychosis)とARMS(at risk mental state)の薬物療法について講演しました。日本医療研究開発機構(AMED)の児童・思春期における心の健康発達・成長支援に関する研究班の先生方と、昨年度作成した「早期精神病の診療プランと実践例-予備的ガイダンス-」の紹介を行いました。総合討論では、実際にearly psychosisの専門外来を行っている病院における実情や、問題点などを話し合うことができました。総合病院の精神科は、早期支援が必要な、特に青年期の患者さんが初めにコンタクトする可能性も高いため、この学会で早期介入をアピールできたことは有意義であったと思います。一方で、残念ながらフロアとの活発な議論はなく、本邦ではこれからも積極的な普及啓発が必要な分野であることを再認識しました。
RANZCP Faculty of Psychiatry of Old Age Conference 2017
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 髙橋 誠人
11月8日~10日にニュージーランドのクイーンズタウンで開催された国際老年精神医学会に参加しました。私はポスター発表で、「慢性外傷後脳症の前段階としてアミロイドβが蓄積する」という内容で発表を行いました。学会全体の内容としては、アボリジニ―やマオリ族など先住民との比較がクローズアップされた疫学研究が多かった印象を受けました。認知症の発症リスクは白人と比較すると約3倍高く、教育歴が平均9年と教育歴も低く、また薬物使用歴も高い傾向がありました。また先住民という偏見によるストレスなども関連していることによって認知症の発症率も高いといった示唆に富んだ研究でした。疾患に対する治療という点で興味深かったのは、レビー小体型認知症や精神症状を伴うパーキンソン病に対しての第一選択薬がclozapineの少量投与というものであり、総合内科医でさえclozapineを容易に処方しているという点は特に驚嘆しました。更に以前から興味を持っていたことではありますが、高齢者の睡眠に関する発表があり、complex sleep behaviours;CSBは併存疾患のない若い女性で、睡眠薬の中でもzolpidemを過剰摂取する患者によって誘発されやすいというものでした。国際学会に参加する度に、これまでには思いも依らなかった視点で日常診療に取り組めるのは大変有意義であると感じさせられます。これらの知識をまた診療や研究に生かしていきたいです。
第27回日本臨床精神神経薬理学会
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 松岡 究
平成29年11月2日から3日に島根県の松江テルサで開催されました第27回日本臨床精神神経薬理学会に参加しました。水の都 松江の名が示す通り、宍道湖の近くに位置する会館で、松江城の堀川では遊覧船が行きかう素晴らしい場所でした。
特別講演では、インドネシアのHasanuddin universityのAndi Jayalangkara先生による、Research on Asian Prescription pattern(REAP)についての講演がありました。同研究はアジアにおける多国間の大規模共同研究ですが、抗精神病薬の多剤併用が多いこと、第一世代から第二世代抗精神病薬へのシフトがあることなどの内容がありました。低用量のclozapine(25mg/日)が頻繁に使用され、眠剤としても用いられているなど、日本とは異なる使用方法について興味深く拝聴しました。
松岡は、「外来通院中のアルツハイマー型認知症患者におけるガランタミンによる行動・心理症状の変化」についてのポスター発表を行いました。ガランタミンと喫煙の関連についての質疑応答があり、活発な議論を行うことができました。
第41回日本神経心理学会学術集会
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 松岡 究
平成29年10月12日から13日に東京の一橋講堂で開催されました第41回日本神経心理学会学術集会に参加しました。シンポジウムでは、流暢性/非流暢性の二分法の意義や発語失行(AOS)との関連などについての講演がありました。脳血管障害による局所的な病変に起因する失語症状の音声データもあり、あまり経験したことがない症状に接することができました。また、dynamic causal modeling(DCM)やvoxel-based lesion-symptom mapping(VLSM)などの先端的な脳画像解析手法と神経心理学を組み合わせた試みについての講演があり、大変興味深く聞かせていただきました。
WPA XVII WORLD CONGRESS OF PSYCHIATRY
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 盛本 翼
平成29年10月8日から12日までドイツのベルリンで行われた、WPA XVII WORLD CONGRESS OF PSYCHIATRYに参加し、「Computer-assisted cognitive remediation therapy increases hippocampal volume in schizophrenia」というタイトルで、口頭発表しました。内容は、統合失調症患者さんに対してVCAT-Jという認知機能リハビリテーションを行ったところ、右の海馬の灰白質容積が増大したというものでしたが、座長の先生からは、「効果は持続するのか」「同じく海馬の増大が報告されている運動療法と組み合わせたリハビリテーションをやってみてはどうか」などといった質問やアドバイスをいただきました。同一のセッションやその他のセッションにも、統合失調症患者さんを対象とした、いわゆる認知リハ関連の演題は見当たらず、まだまだ新しい分野であることが分かりました。しかし、何らかの治療的介入あるいは予後などのアウトカムを、MRIを用いて評価した研究は数多く発表されており、当教室でも継続して研究していきたいと感じました。
第39回日本生物学的精神医学界・第47回日本神経精神薬理学会 合同年会
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 井川 大輔
平成29年9月28日から30日まで札幌で開催された第39回日本生物学的精神医学界・第47回日本神経精神薬理学会 合同年会に参加し「精神疾患におけるマイクログリア由来ニューレグリン発現」という演題でポスター発表を行いました。最近は恐怖記憶のメカニズムに関する研究が多く、本学会でも多くのセッションがありました。一般的にはPTSD患者に効果のある暴露療法のように恐怖記憶の消去のために恐怖記憶を思い出す必要があります。この問題に対して、恐怖記憶を思い出す過程を省く治療法が報告されていました。睡眠中の介入やfMRIを用いたトレーニングによって恐怖記憶消去や減弱といった効果があるとされ、興味深く拝聴しました。他にも性差や恐怖消去刺激など基礎実験に関するコツなどを様々な先生方から聞くことが出来とても有意義な学会となりました。
第20回日本薬物脳波学会・第1回MMN研究会合同会議
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 太田豊作
平成29年9月22日と23日に福島市のコラッセふくしまにて開催されました第20回日本薬物脳波学会・第1回MMN研究会合同会議に参加し、「ADHD薬物治療におけるatomoxetineと徐放性methylphenidateの血液動態反応の比較」という演題で口演発表させていただきました。第1回MMN研究会との合同開催ということもあり、MMN(ミスマッチ陰性電位)に関する演題が多く、聴覚刺激だけでなく視覚刺激による反応、聴覚刺激の中でも刺激の持続時間、周波数の違いなどによる検討など多くのことを一度に濃密に勉強するよい機会となりました。ハイリスク精神状態(いわゆるat-risk mental state(ARMS))においては、後に統合失調症を発症した群は持続長MMNの振幅が低下しており、統合失調症を発症しなかった群では低下がみられなかったという報告があり、臨床的にハイリスクな群の中から、よりハイリスクな一群を同定するバイオマーカーとしてMMNが有用と考えられるということでありました。類似する研究を行っていることもあり、刺激を受けました。
The 5th Asian Congress of Schizophrenia Research
1. 東大阪市立障害児者支援センター 精神科 岡﨑康
2017年9月1日から3日までタイ バンコクで開催されたThe 5th Asian Congress of Schizophrenia Researchに参加し、「Blonanserin treatment in patients with methamphetamine-induced psychosis comorbid with intellectual disabilities」のタイトルでポスター発表を行いました。 本学会への参加は初めてでしたが、アジア各国の統合失調症治療ならびに研究についての講演やポスター発表が多くみられました。韓国や中国の方の発表も多く、ポスター発表ではこちらから質疑もさせていただきましたが、内容もさることながら英語力の高さをとても感じ、自分自身の英語力の低さを痛感しました。アジアという舞台での学会ではありましたが、今後もアジア各国に負けないよう研究ならびに語学の習得を頑張っていきたいと再認識することができた有意義な学会になりました。
2. 奈良県立医科大学精神医学講座 助教 紀本創兵
2017年9月1日から9月3日までバンコクで開催された、Asian Congress of Schizophrenia Reseach(第5回アジア統合失調症学会)に出席いたしました。私は臨床研究の一つとして取り組んでいるものから、「Different Patterns of Blood Oxygenation in the Prefrontal Cortex in Clinical Phenotypes of Schizophrenia and Bipolar Disorder」というタイトルでポスター発表を行いました。発表後も多くの質問を頂き、活発な議論を行うことで、今後の臨床や研究の方向性を確認することができました。そして最終日には大変光栄なことに、壇上に呼ばれベストポスター賞の表彰を受け、更なる励みとなりました。 学会では幅広い内容の発表がありましたが、中でも興味深かったのは、タイやマレーシアでの医療情勢についてでした。保険の関係で使用できない薬剤が大変多く、臨床医はその中で苦労し治療にあたっている様子が垣間見ることができました。そういった面では恵まれた日本の現状を踏まえ、今後の医療のあるべき姿について考えることができ、大変貴重な機会となりました。
第113回精神神経学会
奈良県総合リハビリテーションセンター精神科 松浦広
2017年6月22日から24日まで名古屋国際会議場で開催された、第113回日本精神神経学会学術総会にて、「不登校児のJ-KIDSCREEN-52によるQOL評価」のタイトルでポスター発表を行いました。本学会のテーマは精神医学研究・教育と精神医療を繋ぐ-双方向性の対話- で、シンポジウムではオープンダイアローグのセッションに参加し、オープンダイアローグとACTの違いや共通点、実践例について知見を得ました。オープンダイアローグは統合失調症だけでなく、ひきこもりや不登校にも応用できる可能性があり、大変勉強になりました。また、医局の鳥塚通弘先生が国際学会発表賞 (シンポジウム組織部門) を受賞され、授賞式に参加し、今後の臨床研究の励みとなりました。
奈良県立医科大学 大学院生 小森 崇史
2017年6月22日~24日まで、名古屋で開催された第113回日本精神神経学会学術総会に参加し、「マイクログリア由来脳由来神経栄養因子(BDNF) と心的外傷後ストレス障害(PTSD)」という演題でポスター発表をして参りました。PTSDの背景にある恐怖記憶消去の障害に着目し、その病態の背景にマイクログリア由来のBDNFの関与がある可能性について示しました。精神神経学会には普段臨床でご活躍されている諸先生方が全国から多数参加されており、本発表の内容が「患者さんの治療へどう発展させることが出来るのか」等、臨床に関わる質問をいただくことが出来ました。大学院生として日々基礎的研究を中心に邁進している生活の中で、基礎的な研究成果を追い求めすぎてしまうと、精神科医の研究の目的である精神医学への貢献、さらには患者さんへの貢献という重要な使命を見失うことにも繋がりかねません。本学会に参加し、各臨床でご活躍されている先生方と討議したことで、臨床から基礎的研究へのヒントを得ることが出来たことはもちろん、改めて自分の基礎的研究の目的を再確認するいい機会となり非常に有意義でした。
第32回日本老年精神医学会
奈良県総合医療センター精神科 後藤 晴栄
奈良県立医科大学精神医学講座 山内 崇平
2017年6月14日から16日まで名古屋で開催された第32回日本老年精神医学会に参加し、「せん妄の遷延化に関連する因子についての検討」という演題で、ポスター発表をさせていただきました。性別(男性)、オピオイド鎮痛剤および非オピオイド鎮痛剤の内服がせん妄遷延化の危険因子であったという内容でした。座長の森川先生や他施設の先生方から、癌の病期や血液透析についての御質問があり、更に検討させていただこうと思います。 教育講演や特別講演では、生理学、画像研究から、精神病理、地域医療など盛り沢山な内容で、勉強させていだきました。池谷裕二先生の特別講演を拝聴させていただきましたが、難しくてほとんど消化できませんでした。加齢による不適応が自閉スペクトラム症の特性と類似する点から仮説を立てて検証されており、こうやって研究はアプローチするものなのかと驚きました。 貴重な機会をいただき、大会長の岸本教授、医局の先生方に、感謝しています。
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 高橋誠人
平成29年6月14日から16日に名古屋市のウインクあいちにて開催されました第32回日本老年精神医学会に参加し、「アルツハイマー型認知症患者の前頭葉機能と介護負担の関係についての後方視的検討」という演題でポスター発表させていただきました。今年の学会は岸本教授が大会長を務め、医局からも多くの先生方が参加されました。例年と比較しますと、学会への参加者が若干多かったように思え、どの会場もほぼ満席であるように感じました。また今回の学会を通して感じたことは臨床的内容だけでなく、基礎医学(研究)の分野まで幅広く網羅しており、疾患の偏りもなく高齢者に関する様々な内容が盛り込まれており、どの講演も満足のいくものであったと思いました。特に印象に残りましたのは、臨床分野ですと道路交通法に関する内容でした。今年の3月12日に道路交通法が改正されたことに伴い、どのような問題点が浮上しているのか、またどのように対処すべきであるか等はキャッチーな内容のものであり、大変勉強になりました。また、研究という観点からすると、fMRIやMRIでのvolume解析のデータ、および今後の展望などを教育講演で学び、今後も画像解析を研究として行っていく上で良いモチベーションになったかと思います。今後も当院での認知症疾患センターにて様々な患者様から学べることを吸収しながら臨床的なデータを集積し、新たな発見が得られればと思っています。
2016
第24回日本精神障害者リハビリテーション学会
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 松田康裕
11月30日から12月2日まで長野市にて開催された第24回日本精神障害者リハビリテーション学会に参加し、自主企画「就労支援に役立つ認知機能リハビリテーション」にて講演致しました。内容は、オリジナル版コンピュータソフトJcoresを用いた認知機能リハビリテーションプログラム(VCAT-J)についての効果検討を、他の演者が就労移行支援事業所におけるVCAT-Jの実践などについて講演致しました。
本学会への参加は初めてですが、ポスター発表にてVCAT-Jに関する症例報告もあり、研修会を通して全国の施設でVCAT-Jを実践して頂いていることを改めて実感することができ、今後の普及活動にも積極的に関わりたいと思いました。
私自身デイケアで従事しているため就労支援に関わる機会が多く、メンバーが就労できてもすぐに離職してしまうケースを目の当たりにし、恥ずかしながら一喜一憂してしまっている自分がいましたが、落ち込んでいるのはスタッフ以上にメンバーであることを改めて思い知らされました。また就労しても25%は1か月以内で離職し、1 年以上継続して勤務するものは4 割程度にとどまっている理由を考えると、丁寧なマッチングやメンバーの障害特性を踏まえた職場定着支援が重要であるように思いました。さらに就労支援スペシャリストとの意見交換の場で、今後の就労支援に役立つ情報を得ることができ、大変有意義な学会であったと思います。
12th World Congress of Biological Psychiatry
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 井川大輔
2016年11月25日から27日までペルーの首都リマで開催された12th World Congress of Biological Psychiatry学会に参加し、「MICROGLIA-DERIVED NEUREGULIN EXPRESSION IN AUTISM MODEL MICE」のタイトルでポスター発表を行いました。同時に岸本教授を座長にシンポジウムが行われ、助教の牧之段、紀本、鳥塚がシンポジストとして統合失調症や自閉症におけるE-Iバランスを中心に講演を行いました。精神疾患治療中の身体管理、自殺といった臨床を中心とした演題から、最近流行である精神疾患と酸化ストレス、炎症や脳血液関門などの生物学的基礎研究の演題まで幅広く取り上げられており、興味深く拝聴させていただきました。開催地故なのか、ラテン系ののりなのか、スペイン語で講演が行われてしまったり、時間通りに進まなかったり、初体験の多い学会でした。
第26回日本臨床精神神経薬理学会
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 山室和彦
2016年11月18日から19日まで大分で開催された第26回日本臨床精神神経薬理学会に参加し、「ADHDとASDの併存症例に対する薬物療法」をシンポジウムとして、「児童期ADHDにおける徐放性メチルフェニデートとアトモキセチンの血液動態反応の違い」をポスターとして発表させて頂きました。
学会ではもちろん薬物治療に関するテーマがほとんどでしたが、今回の学会のテーマが「こころとからだにやさしい薬物治療」であり、オメガ3系脂肪酸による精神疾患の予防効果の特別講演を拝聴しました。オメガ3系脂肪酸の基礎から臨床応用まで多くの情報を解説して頂きました。また、私のシンポジウムの内容になりますが、多くの方がADHDとASDの併存症例の診断および薬物治療に苦慮しており、さまざまな質問を頂き、ディスカッションを通して今後の臨床や研究において今後の方向性を再認識することができ大変有意義な時間を過ごすことができました。
第57回 日本児童青年精神医学会総会
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 山室和彦
2016年10月27日から29日まで岡山で開催された第57回日本児童青年精神医学会総会に参加し、「ADHDとASDの併存症例の診断と薬物治療」という演題でシンポジウムを、2015年に全国の児童青年精神医学会に所属する医師を対象にアンケート調査を行い、その結果を「自閉スペクトラム症に注意欠如・多動症を併存した児童青年期患者への薬物療法に関するアンケート調査」という演題でポスター発表をさせて頂きました。
児童を対象とした学会であるため、私が発表させて頂いたような薬物治療に関する演題よりも、精神療法や患児やその保護者との関わり方などのセッションが多かったです。なかでも江戸時代は出産時に母親の死亡リスクが高いことや、栄養不足から母乳もでにくいことから、母乳が慢性的に不足しており、地域のコミュニティとして子どもをみんなで育てるという文化があったようです。一方で、現代は母親と子どもが一対一で育児をしており、母乳という観点から社会全体で子供を育てていくというネットワークが低下しているという話があり、興味深く拝聴させて頂きました。今後の臨床治療において視野を広げることができ大変有意義な学会でした。
合同年会 2016 FUKUOKA
第38回日本生物学的精神医学会、第59回日本神経化学大会
奈良県立医科大学精神医学講座 大学院生 山下泰徳
平成28年9月8日から10日にかけて、福岡国際会議場で開催された「第38回日本生物学的精神医学会・第59回日本神経化学大会合同年会」に参加しました。私自身は「グレリンが自閉症モデルマウスのマイクログリアに与える効果の検討」という演題でポスター発表を行いました。ポスター発表は初めてでしたが、口頭発表近い所で他の方と討論できたことが新鮮でした。
また、若手研究者育成セミナーという若手研究者の育成と交流に力を入れたプログラムがあり、グループ毎に違った講義が行われ交流を深めることができました。精神科以外にも眼科等他の科の研究者や基礎系の研究者の方も多く、研究に関して同年代の研究者と話す貴重な機会が持て、非常に有意義な学会でした。
第11回パーキンソン病・非運動障害コングレス
奈良県立医科大学 大学院生 高橋誠人
平成28年10月6日から8日にスロベニアのリュブリャーナで開催されました第11回パーキンソン病・非運動障害コングレスに参加しました。初日にはチョコレートやカフェイン、喫煙とパーキンソン病(PD)との関連性を疫学データをもとに生理学的なレベルでの説明や、PDやアルツハイマー型認知症(AD)の認知機能と代謝パターンの関連性、更にはαシヌクレインに対するフェーズ1での免疫療法など、最新のエビデンスの発表があり、2年前の学会と比較してかなり深い内容まで取り扱うようになっていました。
2日目には、PDにおける非運動性サブグループの新たな考え方を説明、そして慢性疲労は縫線核のセロトニン受容体の低下などが関連しており、またこれに伴いオレキシン量の低下なども見られていることから、認知機能の変動性や日中の覚醒度に影響している可能性を示唆するような発表がありました。3日目にはPD患者のQOL改善をテーマとしたもの、またPD前駆状態に対して、早期にPDを診断する画像検査などが取り上げられていました。
学会の合間に観光名所を訪れましたが、風光明媚な自然と歴史ある古城がとても良く調和していました。リュブリャーナの中心街は毎日清掃されているためでしょうか、とても綺麗でまた治安もとても良かった印象を受けました。
3日間充実した内容であり、また臨床応用も可能なアイディアを得ることができたと思います。
22th International Association for Child and Adolescent Psychiatry and Allied Professions (IACAPAP)
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 山室和彦
2016年9月18日から22日までカナダのカルガリーで開催された第22回International Association for Child and Adolescent Psychiatry and Allied Professionsに参加し、「Impairments of event-related potentials in drug-nai¨ve pediatric patients with obsessive-compulsive disorder」「Event-related potentials reflect the efficacy of pharmaceutical treatments in children and adolescents with attention deficit/hyperactivity disorder」の2つの演題でポスター発表をさせて頂きました。
学会での発表の全体の流れとしては児童精神科医が地域、特に学校などで介入を行うことの重要性についての演題が多く見られました。それらの話題とはテーマが異なりますが、私が興味深かったテーマとして、自閉スペクトラム症やトゥレット症候群などの発達障害においても経頭蓋磁気刺激法(TMS)が効果的であるというシンポジウムを拝聴させて頂きました。その機序としては繰り返し刺激を行うことによる神経可塑性が一つの要因ではないかという内容であり、現在研究を行っている内容とも類似する点がるあるため、大変勉強になり有意義な時間となりました。
第31回日本老年精神医学会
三重県立こころの医療センター 高橋誠人
平成28年6月23日から24日に金沢歌劇座にて開催されました第31回日本老年精神医学会に参加しました。私はポスターセッションで発表させていただきました。学会の演題は主に臨床に根ざしたものが多く、その中でもレビー小体型認知症の割合が多かったように感じました。レビー小体型認知症の初期症状であるレム睡眠行動障害をフォローし続け、どの時点でDLBに移行するのかといった発表や、BPSDをターゲットとした際にどういった対処法が最も適切であるかをお互いにシェアするという「ちえのわnet」等はこれから症例を蓄積していくことによって、更に充実した高齢者への対応へとつながっていくことを考えると大変有用な研究であると驚嘆しました。普段診察している中にも、視点を変えることによってまたまだ沢山のアイディアが埋まっていると想像するとモチベーションの向上に十分寄与した学会でした。
第112回日本精神神経学会
1. 奈良県立医科大学附属病院精神医学講座 助教 松田康裕
2016年6月2日から4日まで幕張メッセ国際会議場で開催された「第112回日本精神神経学会」に参加しました。本大会のシンポジウム「地域で診る統合失調症 早期発見から回復までの統合的ケアの展開」にて「早期精神病に対する心理社会的介入~認知矯正療法を中心に~」について講演をしました。本シンポジウムでは統合失調症をはじめとする精神病に対する発症予防や早期介入、急性期治療、回復期リハビリテーションについて、その連続性を意識した最新の知見と具体的なノウハウについて各シンポジストが発表しました。他のシンポジストの講演では、入院約1週間後からpaper and pencilを用いた認知機能リハビリテーションを実施していることを拝聴し、回復にはできるだけ早期からのリハビリの実施が大変重要であることを再認識することができました。 本学会は日本精神医学会で最も大きな規模の学会であり、さらに新専門医制度導入にあたり、例年以上に多くの精神科医が一堂に会していたため、セッション開始前から列をなして並んでいたセッションも多数ありました。当センター救急入院料病棟には薬物・アルコール使用障害患者が入院することもあり、普段聞く機会が少ない依存症関連のセッションを中心に参加しました。依存症患者に共通してみられる特徴や背景に潜む併存疾患、接し方などについて学ぶことができ大変貴重な機会となりました。
2. 奈良県立医科大学精神医学講座 助教 山室和彦
2016年6月2日から4日にかけて幕張で開催された第112回日本精神神経学会学術総会に参加させて頂きました。今回Scientific Reports誌に掲載された「Differential patterns of blood oxygenation in the prefrontal cortex between patients with methamphetamine-induced psychosis and schizophrenia」が日本精神神経学会精神医学奨励賞に選ばれたため、受賞講演および授賞式に参加してきました。このような受賞の機会を頂いたことに感謝するとともに、今後も臨床や研究に励んでいきたいと改めて感じました。また決して1人の力ではなく、家族の支えやみなさんの多くの力があったからこそ頂いた賞だと思いますので、今後ともご指導ご鞭撻を賜りますよう、衷心よりお願い申し上げます。
3. 奈良県立医科大学精神医学講座 大学院生 岡崎康輔
2016年6月2日から4日にかけて幕張メッセ、アパホテル&リゾート東京ベイ幕張で開催されました第112回日本精神神経学会学術総会に参加させて頂き、「近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)を用いた精神病発症危機状態(at risk mental state)の前頭前皮質における血液動態反応の低下」というタイトルでポスター発表を行いました。他大学、他施設の先生方とディスカッションもさせて頂き、今後の研究において自身の方向性を再確認することもでき大変有意義な時間を過ごさせて頂きました。 また、当学会は日本における精神医学会で最も大きな学会であり、幅広いテーマで講演が行われておりました。中でも、精神疾患研究におけるDNAメチル化の役割についてのシンポジウムは大変興味深く拝聴させていただきました。各演者の先生方の研究内容もさることながら、これから研究を行っていく駆け出しの者として、先生方の研究に対する姿勢や研究を組み立てていく過程を垣間見ることができ大変勉強になりました。
4. 三重県立こころの医療センター 高橋誠人
平成28年6月9日から11日に幕張メッセで開催されました第112回日本精神神経学会学術総会に参加しました。私は認知症のセッションにて「頭部外傷に伴う認知機能低下症例についての脳神経イメージング」という演題で口頭発表をさせていただきました。質疑応答では白質病変やAPOE4などの認知症の進行に寄与する遺伝的負因の有無、また本症例の症状の解釈について質問をいただき今後の検討課題を見出すことができました。自身の発表以外では、今後の臨床能力を向上させていくため、電気けいれん療法や睡眠学シンポジウムに参加し、またポスター発表などにも参加しました。認知症や画像などをテーマにしたものを中心に閲覧し、今後の臨床に活かせそうな視点やアイディアを吸収することができ、更に研究や臨床に力を入れていきたいというモチベーションの向上に充分寄与し、充実した学会参加であったと認識しました。
5. 奈良県立医科大学精神医学講座 後期研修医 青木智恵子
平成28年6月2日から4日に幕張メッセで開催された第112回日本精神神経学会学術総会に参加させていただき、臨床研修医演題において「意味性認知症の一例」という演題で発表を行いました。このような大きな学会で発表するのは初めてで、非常に貴重な経験をさせていただきました。また、自分と同じ臨床研修医が、それぞれ様々なテーマで素晴らしい発表をしているのを見て、私自身今後の励みになりました。 脳波のワークショップにも参加しましたが、苦手意識をもった若手医師向きの内容で、基本的なことから疾患・薬剤別に典型的な脳波などまで講義していただき、今後の診療に生かしていきたいと思いました。またその他のセッションでも質問や議論が盛んに行われており、学会は日々の臨床を行うなかで疑問に思う点を話し合う場でもあるのだなと感じました。本学会に参加したことは非常に有意義な時間であったと思います。
6. 奈良県立医科大学精神医学講座 後期研修医 上田淳哉
2016年6月2日から4日にかけて千葉県の幕張メッセで開催された第112回日本精神神経学会に参加させて頂き、「覚醒剤精神病での前頭前野における衝動性と関連した血液動態反応の低下」というタイトルで臨床研修医演題の発表を行いました。さまざまな方とディスカッションをさせて頂く機会を頂くことで今後の研究の発展にもつながり、大変有意義な時間を過ごすことができました。 さまざまなテーマでの発表がありましたが、当科症例検討会でもご指導ご鞭撻頂いている牛島定信先生もご講演された「最近のパーソナリティ障害臨床事情」のシンポジウムは大きな会場にも関わらず立って聴く人も多く見られました。4人の演者の中でも「静かなるボーダーライン」という概念や「シゾイドパーソナリティ」についての講演では、長期に渡っての細かな病歴聴取と共に、その精神病理について考察がなされており非常に興味深い内容でした。また、その牛島先生の指導を仰げる当科の教育システムの贅沢さが身に染みました。 今後の臨床治療を行っていく上で有意義な学会となりました。
American Psychiatric Association (APA) 169th Annual Meeting
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 山室和彦
2016年5月13日から20日にかけてアメリカのアトランタで開催された第169回American Psychiatric Associationに参加させて頂き、「Differential patterns of blood oxygenation in the prefrontal cortex between patients with methamphetamine-induced psychosis and schizophrenia」というタイトルでポスター発表を行いました。さまざまな方とディスカッションをさせて頂く機会を頂くことで今後の研究の発展にもつながり、大変有意義な時間を過ごすことができました。
本学会はアメリカ精神医学会の中でも大規模な学会であり、さまざまなテーマでのシンポジウムなどが行われていましたが、なかでもiPS研究の分野で有名なFred Gageによる講演が行われていたので拝聴させて頂きました。論文では名前をよく聞いてはいましたが、実際の講演を聞いたことがなかったので、それだけでも本学会に参加できて良かったと感じました。講演の内容としては統合失調症や双極性障害、アルツハイマー型認知症におけるiPS研究の未発表を含めた詳細なデータを提示しておりました。特に統合失調症では海馬のある細胞群で健常者と違いがあることや、双極性障害ではリチウム反応性によりサブグループに分類できるのでないかなどが個人的に非常に興味深いものでした。
American Psychiatric Association (APA) 169th Annual Meeting
奈良県立医科大学精神医学講座 高田涼平
2016年5月13日から20日にかけてアメリカのアトランタで開催された第169回American Psychiatric Associationに参加させて頂き、「Reduced prefrontal cortex hemodynamic response in adults with methamphetamine induced psychosis」というタイトルでポスター発表を行いました。私個人として、海外での発表は初めてであったため、大変貴重な経験をさせて頂きました。
臨床や基礎研究に関わるさまざまなテーマでの発表がありましたが、そのなかでも医療用大麻(マリファナ)に関するシンポジウムが大変興味深かったです。医療用大麻は沈痛作用や制吐作用だけでなく、さまざまな癌細胞自体に対する効果やてんかんやチックなどにも効果があることから、近年、アメリカだけではなく世界の多くの国で医療用大麻を合法化する動きがあるようです。そのシンポジウムではスマートフォンを使って参加者の医療用大麻についての是非をまとめていましたが、講演が進むにつれて徐々に賛成する意見が多くなっていたのが印象的でした。しかし一方で、発達段階では神経機能に影響があるなどの報告もあり、まだまだ議論の余地はありまそうですが、大変勉強になり有意義な時間となりました。
第2回CEPD研究会
奈良県立医科大学精神医学講座 松田康裕
2016年3月12日に国立精神・神経医療研究センターで開催された「第2回CEPD研究会」に参加しました。本大会のワークショップ「認知機能リハビリテーション」にて「JCORES(Japanese Cognitive Original Rehabilitation Program for Schizophrenia)を用いた認知リハビリテーションの概要とその効果」について講演をしました。本ワークショップでは、他の講師が「メタ認知トレーニング(MCT-J)」や「社会認知ならびに対人関係のトレーニング(SCIT)」について講演され、さまざまな認知機能リハビリテーションについて紹介がなされました。
また大会テーマは「認知機能と社会機能をつなぐもの」ということで、特別講演ではUCLAのGreen先生が社会認知について、シンポジウムでは内発的動機付けの重要性や認知機能リハビリテーションと他のプログラムとの組み合わせについて講演され、大変勉強になり、有意義な時間となりました。
今回が初めての参加でしたが、パソコンソフトを用いた別の認知機能リハビリテーションプログラムNEAR((Neuropsychological Educational Approach to Rehabilitation)についてのポスター発表が大変多く、広く日本において普及していることを知る機会になりました。今後は、JCORESもNEARのように多くの施設で使用してもらえるよう普及活動に力を入れようと思いました。
第118回近畿精神神経学会
公益財団法人復光会 垂水病院 岡崎康輔
平成28年2月20日に奈良で開催された第118回近畿精神神経学会に参加しました。私自身は、本学会のセッションにて「医療観察法病棟におけるASDに伴う攻撃性・衝動性にclozapineが著効した一例」という演題で発表をさせていただきました。質疑応答ではASDにおける諸症状について、また、統合失調症との鑑別について先生方と議論ができ、とても有意義でした。
本学会では、関西一円の各施設に所属される若手医師の先生を中心に発表が行われていました。疾患別、治療別に各セッション分かれており、各セッションで盛んに議論が行われていました。医師ごと、施設ごとに違った視点で疾患を捉えており、他の先生の発表でしたが拝聴させていただき私自身今までと違った着眼点で疾患を捉えることを学ばせていただきました。
今後の臨床治療において視野を広げることができ大変有意義な学会でした。
第118回近畿精神神経学会
天理よろづ相談所病院白川分院精神神経科 原田泉美
平成28年2月20日に開催された第118回近畿精神神経学会で発表させていただきました。症例報告での発表が多く、抑うつ状態が主訴でビタミン12欠乏が指摘されたものなど、やはり一例一例除外診断なども含め丁寧に診療にあたることの大切さを再認識いたしました。
今回は東大寺境内にある東大寺総合文化センターでの開催ということで、お天気は残念ながら雨だったものの、休憩時間には南大門や鹿の写真を撮る参加者の皆さんの姿が多く見られました。
2015
第20回SST学術集会
奈良県立医科大学精神医学講座 松田康裕
2015年11月27日から28日まで千里ライフサイエンスで開催された「第20回SST学術集会」に参加しました。本大会の自主企画「精神科リハビリテーションの重要性をいかに伝えるか ~入口と広がり~」にて「医学生や看護学生,研修医に精神科リハビリテーションの重要性をいかに伝えるか」について講演をしました。当センターが取り組んでいる学生教育および研修医への指導について具体的に述べたところ、フロアからは大学病院でこれらを取り組んでいることに称賛のお言葉を頂戴しました。一方で、当事者家族からは病院だけでの支援に留まらず、アウトリーチによる支援を必要とする当事者にも目を向けてほしいと厳しい意見も頂戴しました。
認知症患者への包括的ケア「ユマニチュード」の特別講演を拝聴しました。ユマニチュードのキーワードは「見る、話しかける、触れる、立つ」の4つだそうですが、SSTの技術にも共通する部分があり、大変興味深い内容でした。当センターの病棟看護師も参加していたので、臨床現場に生かせるよう頑張りたいと思います。
第20回日本デイケア学会
奈良県立医科大学精神医学講座 松田康裕
2015年10月23日から24日まで大阪国際会議場で開催された「第20回日本デイケア学会」に参加しました。本大会のシンポジウム「リカバリーを達成するための包括的リハビリテーションプログラムとは」にて「新規開発ソフトJCORES(Japanese Cognitive Original Rehabilitation Program for Schizophrenia)を用いた認知リハビリテーションの概要とその効果」について講演をしました。本シンポジウムでは従来からデイケアなどリハビリテーション施設で実施されているリハビリテーションプログラムと、近年、開発されその効果が検討されている神経認知機能および社会的認知に対するリハビリテーションとをどのように組み合わせることでリカバリーを支援できるのかについて議論しました。会場からはJCORESに関する多くの質問があり、関心の高さを感じ取れました。
今後は就労を希望する人のために、このJCORESが役立てるよう普及活動をさらに頑張っていこうと思えた学会となりました。
The Korean association of geriatric psychiatry 2015
日本老年精神医学会 若手交流プログラム
奈良県立医科大学精神医学講座 大学院生 松岡
Delayed atrophy in posterior cingulate cortex and apathy after stroke (poster session) 本学会は韓国にて年に2回開催される老年精神医学に関するシンポジウムであり、今回は日本老年精神医学会若手交流プログラムよりトラベルグラントをいただき、冬のシンポジウムに参加させていただいた。
アルツハイマー病の個々の病型に対する研究やVascular cognitive impairment (VCI)などについてのセッションが行われ、ポスターセッションではアパシーや抑うつなどのBPSDについて、拡散テンソル画像や安静時機能的MRIなどの画像解析手法を用いた研究や疫学研究などの発表があった。私自身は、”Delayed atrophy in posterior cingulate cortex and apathy after stroke”を発表した。同年代の若手精神科医と脳梗塞後慢性期における後部帯状回の萎縮とアルツハイマー病との関連について活発な議論を行うことができた。
さらに夜にはディナーにもお招きいただき、高齢社会という日本と韓国で共通してみられる変化や独居の認知症患者に対する介護などの課題について意見を交わすことができた。
第56回日本児童青年精神医学会総会
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 上田昇太郎
2015年9月29日から10月1日に開催された「第56回日本児童青年精神医学会総会」に参加させていただきました。また本総会で、私自身「近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)を用いた成人期注意欠如・多動症の前頭前野における血液動態反応の低下」という演題でポスター発表をさせていただきました。
今回の総会のテーマは「児童青年精神医学の基本に立ち返って」でありました。本学会は、現在の児童青年を取り巻く状況を反映して、まさに学際的になりつつあります。そうした趨勢を鑑み、人が生物学的存在であると同時に心理学的かつ社会的存在でもあるという認識をあらたにしようという気概に満ちた総会であったように看取しました。それはすなわち、臨床の基本に立ち返るということと同義であることから、例年の総会に比べて、今回の学会では生物学的なものもさることながら、より臨床に則したシンポジウムや症例検討が多かったように見受けられました。
臨床の道しるべとなるような内容を学べたり、日頃の臨床疑問が解決したりと、今後の臨床や研究における大いなる動機づけとなった有意義かつ濃密な3日間でした。
第58回日本神経化学大会
1. 奈良県立医科大学精神医学講座 助教 鳥塚通弘
平成27年9月11日から13日まで、大宮で開催された第58回日本神経化学大会に参加しました。基礎研究者が中心の学会であり、臨床医は非常に少なかったです。しかし、特にAutism Spectrum Disorder関連の演題が多く、オキシトシンの治験の話もあり、世間の関心も研究者の関心も集めているのだなと思いました。私自身は、“Induced pluripotent stem cells-derived neurons of the patients with discordant schizophrenia”というタイトルでポスター発表を行いました。内容がまだ未成熟でしたが、討論時間の1時間を過ぎても色々な人と議論ができ、有意義でした。培養系でどうやって神経を成熟させて解析するか、という点が他の研究者もてこずっている様子でしたが、なんとか結果につなげたいと改めて思いました。
2. 奈良県立医科大学精神医学講座 医員 西畑陽介
2015年9月11日から13日まで埼玉県大宮で開催された、第58回日本神経化学会大会および若手研究者育成セミナーに参加させて頂きました。自分の発表はなかったですが、発達障害から認知症、統合失調症などの精神疾患をに関する多くのシンポジウムやポスター発表を拝見、拝聴しました。
ヨーロッパで授乳促進のため使用されているオキシトシンの経鼻スプレー製剤が、健常の成人男性において、他者と有益な信頼関係を形成して協力しやすくなり、相手の表情から感情を読み取りやすくなることなどは以前に報告されていたのですが、今回は同製剤が自閉スペクトラム症の対人場面での相互作用とコミュニケーション障害などの中核症状への効果を検証した東京大学の研究が、特に興味深かったです。根本的な治療薬のない分野であり、結果が出て欲しいと個人的に思っています。
一方で、若手研究者育成セミナーは、さいたま市郊外の風情のある(やや古い)旅館で行われ、学会会員の中でも若手の大学院生が中心で、机上の講義だけでなく寝食を共にして議論し、交流を深めるという会でした。精神科医師よりも基礎系の研究者の方が多く、基礎研究に関して刺激的な話をたくさん聞かせて頂きました。こうして昼は勉強、夜は楽しく語らうという非常に有意義で素晴らしい会でした。
第38回日本神経科学大会
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 紀本創兵
2015年7月28日より7月31日までの日程で神戸の国際会議場でおこなわれました第38回日本神経科学大会に参加してきました。精神科の研究も色々とありますが、精神疾患を脳の病気として科学するものにとっては、毎年おこなわれているこの学会は、日本では最大規模である興味深い学会となります。私自身、久しぶりの参加でありましたが、まず、これから神経科学を専攻しようという大学院生には早くからこのような学会に参加して、勉強して欲しいと感じました。
全体的には、以前より少し規模は小さくなったのかと感じましたが、内容は非常に濃厚なものでありました。最近の流れとして、脳免疫という新しいカテゴリーが人気なのですが、講演やポスターの内容もこれに即した発表が多かったように思います。もう一つ、脳の神経発生の中では神経前駆細胞が未熟な脳の中で、決まったパターンで移動し成熟した脳の構造を形成していくのですが、これらのエネルギー源となるであろう神経細胞内でのミトコンドリアの局在パターンや、ATP代謝などについて、詳細な検討がなされていたことには、個人的に非常に興味深いものでした。
大学からは講演1題、ポスター2題を発表いたしましたが、どれも大変好評でありました。今後も世界に羽ばたく奈良医大精神科!をモットーに頑張っていきたいと思います。
28th WORLD CONGRESS OF THE INTERNATIONAL ASSOCIATION FOR SUICIDE PREVENTION
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 池下克実
2015年6月16日から20日にカナダのモントリオールで開催された第28回世界自殺予防学会に万葉クリニックの岡村和哉先生と当センター精神保健福祉士の下田重朗氏と参加しました。
我々3名はそれぞれポスター発表を行い、私が「Pesticide self-poisoning in Japan: A retrospective study at the Department of Emergency Medicine (2007-2014).」、岡村先生は「Profiling suicide attempts at emergency medical services in Nara, Japan.、下田PSWは「A comparison of the characteristics of suicide attempters with and without admission to psychiatric wards after treatment in an emergency department.」につき発表を行った。私の発表に対して、白人男性から「調査の後に介入は行っているか?」と質問され、「介入は行っていない。」と回答したが、調査だけに留まらず対策に繋げることの重要性を意識させられた。
大会3日目午前のシンポジウム「Bridging the Gap between Emergency Department and Community by Psychosocial Assessments and Interventions in the Care of Suicide Attempters」にて奈良医大も中核施設として参加した自殺対策の戦略研究であるACTION-J(救命センターに搬送され入院した自殺企図者に対するケースマネージメントによる自殺再企図の抑制効果の検討)の主要アウトカムを札幌医科大学の河西教授が報告し、世界大会で初めACTION-Jの成果を報告する機会となった。各国から多くの質問があり、本研究に対する関心の高さが感じ取れた。また同シンポジウム内のスロベニアからの報告では救急医療現場における精神科医療の立場は極めて低く、海外の医療現場内においても強いスティグマが存在していることを知らされた。一方デンマークでは救急医療における精神科的介入は標準的に行われており、クリニックレベルでも国の研究費を受けて自殺未遂者介入を実施していることを知り興味深く感じた。国によって異なった問題があり、それぞれの国に応じて講じられている自殺対策を確認することができ大変刺激になった学会であった。
12th World Congress of Biological Psychiatry
奈良県立医科大学精神医学講座 学内講師 牧之段学
2015年6月18日~22日まで、アテネで開催された、12th World Congress of Biological Psychiatryに参加させて頂き、New insights of clinical, neurobiological and genetic aspects in mental illnessというテーマのシンポジウムで、グリア、その中でも特に私が大学院生時代から継続して研究しているオリゴデンドロサイトと精神疾患との関係につき話してきました。
生物学的精神医学に関する多くのシンポジウムやポスター発表がありました。疼痛に関するシンポジウムが現在の私の興味(マイクログリアと神経栄養因子)とかぶっていることもあり、とても勉強になりました。同シンポジウムにおいては、physicalな痛みとmentalな痛みの機序は同じである、という仮説の説明があり、「ホンマかいな~」といった気持ちで拝聴しだしましたが、次第にその内容に興奮していきました。疼痛は背髄を通り上行した刺激を脳が感ずるもので、通り道である脊髄後角におけるマイクログリア活性化の程度が疼痛を修飾することは勤勉なので知っていましたが、マイクログリア由来のbrain derived neurotrophic factor (BDNF)の過剰発現が悪さをしていることは知りませんでした。脳内のBDNFは神経細胞機能に重要な分子の一つであり、記憶形成等に関与しているわけですが、PTSDなどのトラウマ(こころの痛み?)形成は、いわば過剰な記憶形成でもあるわけで、もしかしたらPTSDにはマイクログリア由来のBDNFが関与しているのでは?とおもいつきました。そして、偶然にもその直後にはPTSDのシンポジウムがあり拝聴したところ、Stellenbosch University(南アフリカ)のSeedat先生が、PTSD症状は血中BDNFが高濃度であればあるほど重症である、とご発表されていました。“こころの痛み”と“BDNFの過剰発現”がつながった瞬間でした。その晩、さっそく疼痛研究をご専門とされている先生と楽しい食事をして泥酔し、共同研究の話がまとまりました。とても有意義な学会となりました。
16th International Congress of European Society for Child and Adolescent Psychiatry (ESCAP)
1. 奈良県総合リハビリテーションセンター 医長 浦谷光裕
本学会にはH27.6.20から4日間参加し、6.23に“Reduced prefrontal hemodynamic response in pediatric autism spectrum disorder as measured by near-infrared spectroscopy”の演題でポスター発表を行った。また、神経発達症、境界性人格障害、摂食障害、気分障害などをテーマにした様々な講演を拝聴した。その中で、“ADHD and autism: Two expressions of the same disorder”の講演では、遺伝子、認知機能、脳構造、脳機能の観点から、自閉スペクトラム症と注意欠如・多動症の共通点と違いについての説明をうけ、大変興味深かった。DSM-5では、自閉スペクトラム症と注意欠如・多動症の併存が認められるようになり、現在はその併存が数多くみられると認識されている。その中で、自閉スペクトラム症と注意欠如・多動症が、どちらも、同じ包括的な神経発達症の表現型であるという仮説を立て、介入や予防などの臨床的意義を含めた話を聞く事ができた。日々の臨床において、自閉症症状が軽減した後に多動・衝動性・不注意症状が目立ってくる症例を数多く経験しており、その事に対し、様々な想像をふくらませることができた。総じて、有意義な学会であった。
2. 天理よろづ相談所病院白川分院精神神経科 松浦広樹
本学会で、私はThe situation of school refusal of outpatient in Child and Adolescent psychiatry of Nara medical universityというポスター発表をさせて頂きました。
ポスター発表ではポルトガルやフランスからschool refusal, school phobiaの発表がありました。フランスでは移民の問題もあり、school phobiaが問題となっているようでしたが、実態は把握できていないとのことで、不登校児童のたまり場をつくる取り組みについて報告されていました。また、「Hikikomori」についての質問が多く、海外でもひきこもりへ関心が高いことを実感しました。ポスター発表全体では、ADHDや行為障害関連のものが多く、ASD関連は少なめな印象を受けました。
全体のトピックスとしては、Radboud University Medical Centre のProfessor of psychiatry and child and adolescent psychiatry Jan Buitelaar 先生がADHDとASDの遺伝的、認知機能障害、機能的構造的な脳の特徴の共通点のエビデンスを例示しながら、同じ疾患の表現型の違いではないか?という新たな概念を提示していました。DSM-5でも併存が明記された疾患群であり、今後ASD、ADHDのどちらの研究に於いても考慮しなければいけない点と認識しました。
開催地のMadridは温暖で気候もよく、日が沈むのが遅い土地で、地元の人がスペイン語がわからない私達にもスペイン語で話しかけてくれるような暖かみのある町でした。中年女性のヒョウ柄の服装など大阪と近い雰囲気を感じました。再び訪れたいと思う土地でした。
第11回 日本司法精神科医学会
奈良県立医科大学精神医学講座 大学院生 松岡 究
本学会は、司法医学に関して、研究・臨床両面にわたる幅広い分野の専門家が集まる学会で、どのセッションでも活発な質疑応答と白熱した議論が印象的であった。私自身は、症例報告を行った。 シンポジウムでは、平成25年に法改正がなされた薬物事犯に対する「刑の一部執行猶予制度」や、犯罪少年について成人と同様の刑事責任能力が審判条件として必要か不要かなど「少年の問題行動を取り巻く制度、教育、治療」などについて、医療関係者のみではなく法律家も加わった討論が展開された。特別講演は、名古屋外国語大学学長亀山郁夫先生による、ドストエフスキーにおける「罪」と、その根底にある悪の本質についての講演であった。当時のダニーロフ事件、革命結社の内ゲバリンチ殺害事件、ドストエフスキー自身による「父親殺害」が作品にもたらした影響についてのお話が大変興味深かった。
28th WORLD CONGRESS OF THE INTERNATIONAL ASSOCIATION FOR SUICIDE PREVENTION
奈良県立医科大学精神医学講座 助教 池下克実
2015年6月16日から20日にカナダのモントリオールで開催された第28回世界自殺予防学会に万葉クリニックの岡村和哉先生と当センター精神保健福祉士の下田重朗氏と参加しました。
我々3名はそれぞれポスター発表を行い、私が「Pesticide self-poisoning in Japan: A retrospective study at the Department of Emergency Medicine (2007-2014).」、岡村先生は「Profiling suicide attempts at emergency medical services in Nara, Japan. 、下田PSWは「A comparison of the characteristics of suicide attempters with and without admission to psychiatric wards after treatment in an emergency department.」につき発表を行った。私の発表に対して、白人男性から「調査の後に介入は行っているか?」と質問され、「介入は行っていない。」と回答したが、調査だけに留まらず対策に繋げることの重要性を意識させられた。
大会3日目午前のシンポジウム「Bridging the Gap between Emergency Department and Community by Psychosocial Assessments and Interventions in the Care of Suicide Attemptersにて奈良医大も中核施設として参加した自殺対策の戦略研究であるACTION-J(救命センターに搬送され入院した自殺企図者に対するケースマネージメントによる自殺再企図の抑制効果の検討)の主要アウトカムを札幌医科大学の河西教授が報告し、世界大会で初めACTION-Jの成果を報告する機会となった。各国から多くの質問があり、本研究に対する関心の高さが感じ取れた。また同シンポジウム内のスロベニアからの報告では救急医療現場における精神科医療の立場は極めて低く、海外の医療現場内においても強いスティグマが存在していることを知らされた。一方デンマークでは救急医療における精神科的介入は標準的に行われており、クリニックレベルでも国の研究費を受けて自殺未遂者介入を実施していることを知り興味深く感じた。国によって異なった問題があり、それぞれの国に応じて講じられている自殺対策を確認することができ大変刺激になった学会であった。