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研究課題
アルツハイマー型認知症患者のアパシー症状および介護者負担に対するリバスチグミン・パッチの影響についての疫学・観察研究

実施研究者
奈良県立医科大学 精神科
岸本 年史

アルツハイマー型認知症(以下、AD)は、脳神経細胞の非可逆的な変性・脱落により、認知機能障害が生じる疾患です。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(以下、AChE阻害薬)やNMDA受容体拮抗薬が治療薬として用いられていますが、根治が期待できる治療法は未だ開発されていません。さらに、病態が進行していくなかで、ストレス、不安、疎外感などの環境因子が行動・心理症状(以下、BPSD)の発現に大きく影響し、介護者(家族あるいは介護士)の負担を増加させる要因ともなっています。そのため、早期診断・早期治療によって病態の進行を少しでも遅らせ、AD患者のQOLを維持することが重要です。また、本邦で発刊されている「認知症疾患診療ガイドライン」の治療アルゴリズムでは、治療薬の効果が不十分であるとされた場合には、その他の治療薬に変更することが推奨されています。

リバスチグミンは、国内唯一の貼付型AChE阻害薬であり、ADの認知機能障害および日常生活動作(ADL)障害の進行抑制効果が認められており、また貼付による投薬が簡便であるという点において介護者負担を軽減できる効果が期待できるとされている薬剤です。リバスチグミンのBPSD症状軽減効果に関して、海外では3つの試験が実施されており、いずれも、認知機能向上に加えて、BPSD症状の軽減が期待できることを述べていますが、国内では現在のところ関連研究はなく、同様の効果を期待しえるのか、不明です。

国内における日常診療下のリバスチグミン・パッチ治療の、AD患者における、認知機能、日常生活動作、介護者負担軽減についての有効性を評価するため、認知症専門医療機関に対して、診療録等診療情報に基づく観察研究を実施します。日常診療下においてリバスチグミン・パッチによる治療を24週以上にわたり、実施中のアルツハイマー型認知症患者(および介護者)を対象に、認知機能、日常生活動作、介護者負担に関する項目に関して、治療開始前、治療開始12週後および24週後の状況について、診療録等の既存情報に基づく検討を行います。

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